年寄りの小言 ━2010年━

ここ数年、ジャズフェスティバルへの出演や地方公演に手応えを感じていた「The WILL」を、まだ聴いたことがない聴衆に届けたいという欲求が強くなった。そんなとき熊本の女子高校から学校公演の依頼があった。音楽の先生が深町さんのファンだったことから話しが進み6月に行くことが決まった。熊本県立劇場コンサートホールというキャパシティ1200名のクラシックホールだ。これは良い機会とばかりに九州の知人に話をしたところ6ヶ所が決まった。ならば関西もと4ヶ所を決めた。おまけに僕の父の生まれ故郷の岡山県での公演も決まった。ライブハウス、コンサートホール、クラシックホール、寺、レストラン など場所は様々。

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岡山のアンコールでは、日舞家の父がThe WILLの演奏する「荒城の月」で共演した。長崎ではライブ終了後そのまま宴会に突入し散々盛り上がった後、リクエストに応えて「The BOLERO」を演奏した。

2010年写真2博多の夜は街に繰り出し、次の日熊本には3人で車移動した。熊本の尚絅高等学校芸術鑑賞会では、800人の女子高生を前に深町さんの音楽講座となった。

北九州はワールドカップの日本対オランダを観戦しながらの打ち上げとなり、京都のお寺では剛君のお母さんが心を込めて主催してくれた。

2010年写真3伊丹の夜はゲストのホルン奏者の東谷さんのお宅に3人で泊めていただき、遅くまで音楽談義に花が咲いた。三重の津では名物の蒸さないうなぎでランチをし、最終日の神戸には深町さんの旧友「赤い鳥」の後藤さんと平山さんもいらしていただき打ち上がった。

The WILLにとって始めての長いツアー、苦労もしたが大きな手応えを感じていた。最終日の神戸の公演の後、剛君と深町さんに2人の素晴らしいパフォーマンスには相応しいとは言えない額ではあるが、このツアーのギャランティーを渡した。深町さんは「こんなにくれるの? たいしたもんじゃない。」と言ってくれた。少し疲れていた僕は、深町さんのこの一言で「よし来年もやろう!」と思い直した。

The WILL 2010 TOUR
5.27(木) [東京 大塚] Welcome back 10th Anniversary
6.13(日) [岡山] アクティブライフ井原 メルヘンホール Guest 鶴羽千翔(日舞家)
6.15(火) [長崎] 陽花亭
6.16(水) [福岡 博多] Gate's7
6.17(木) [熊本] ぺいあのplus
6.18(金) [熊本] 尚絅高等学校 芸術鑑賞会
6.19(土) [福岡 北九州] 音楽館 Twilight
6.20(日) [京都] 光縁寺
6.22(火) [兵庫 伊丹] JazzCafe&Bar STAGE Guest 東谷慶太(ホルン)
6.23(水) [三重 津] ALICA
6.24(木) [兵庫 神戸] チキンジョージ

この年の夏、The WILLはフラメンコダンサーのAMIさん率いるフラメンコトリオとのジョイントライブを行った。オープニングは深町さんが弾くショパンのプレリュード4番でAMIさんが静かに舞った。それぞれのユニットのパフォーマンスの後、後半は一体になりコラボレーションをした。東京と埼玉の2公演だったが、AMIさんだけでなく、ギターの片桐さんもカンテの石塚さんも素晴らしく、僕たち6人はこの組み合わせを楽しんだ。同時にフラメンコの独特なリズムの取り方に苦労し、次は絶対ものにしようと続きを約束し別れた。

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2010年写真4この数日後、深町さんはThe WILLのステージングについて2通の長文メールをくれた。僕たちの音楽を聴きにきてくれたお客さんにより楽しんでもらえるクオリティーでより洗練されたステージを、それはプレイだけの話しではないと深町さんは言う。

例えば僕のMCには「エーッ」が多すぎると。例えばアンコールはちゃんと下がり、拍手がいただけたことを確認してからステージに戻れと。例えば「頑張った」とか「一生懸命」なんて言うな、本当のプロは軽く凄いことをやると。もっと磨きをかけたステージであるべきだと。The WILL は次のレベルに行くべきだと。

2通のメールのタイトルは「年寄りの小言」と「雑感」。そしてこのメールは年末の博品館に向けて次の言葉で結ばれていた。


「・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
ホアキン・コルテスのCDを聴いて、少しフラメンコのお勉強しています。偶然ですが、XX氏から新人ユニットのアレンジを頼まれそうで、それもフラメンコテイストなのです。フラメンコの香のするダンス・ポップミュージックですね。ちょっとした年寄りの苦言でした。

 

深町 純」