Romanticism ━2003年━

2003年9月、5作目の「SOLO-ist」の公演を行った。当時の「SOLO-ist」は西荻窪にあるWENS Studioという天井4メートルのコンクリート打ちっぱなしのフリースペースでやっていた。この場所でやるのもこれがラスト、1年後には三軒茶屋のシアタートラムで次回作を行うことが既に決まっていた。バイオリンの渡辺剛君とチェロの四家卯大さんをゲストにクラシック音楽を拡大解釈した "Romanticism" を発表した。街の喧噪のノイズ音からショパンのノクターン第11番 ト短調 がなり始め、やがてドラムが受け継ぐというオープニングや、後にThe WILL のレパートリーとなる「The BOLERO」もこのときに作った曲だった。

その年の6月のドラムのレッスンの後、ガラスドアに右手の人差し指を挟み切断寸前で病院に運ばれた。1ヶ月スティックを持てなかったことがこの作品に少なからず影響した。僕にとっては滅多に起こらないちょっとした "事件" で、不謹慎とは思いつつ、こんなときはどんな気持ちになるのか興味深く、悲劇のヒーローにでもなったように大切なものをなくした挫折感とそれでも生きて行く生命力のようなものデフォルメ気味に感じていた。

2003年写真1

"Romanticism" コンセプトは

「現実と幻想、正義と悪の混乱、自由という孤独、限りを知らない欲望とそれでも満たされない心・・・。追い付くのも難しい速さで日々繰り返される都会の喧噪の中、現代のロマンティシズムとは何か考えた。」

客席最前列には深町さんの姿。深町さんはこの作品をとても気に入ってくれた。その後 The WILL でライブをやるたびに、「あの時のようにもっとドラムソロをしたら」とか「あの時のようにもっと実験的なトライをしたら」と言ってくれた。最も実験的な作品を深町さんに見てもらえたことが、僕のその後の活動に意味を持った。