深町さんの急逝から約1ヶ月間、いろいろなことが頭を駆け巡りました。12/29の博品館はなんとしても行おうとは決めたものの、果たして代わりのピアニストを加えることで良いのか、という疑問から答えが見付かりません。そこで剛君と話し「深町さんがいない今、もはやThe WILLはあり得ない」という結論に行き着きました。

2001年に舘形さんの公演で始めて一緒に音を出してから今までずっと3人だった、そんな当たり前だったことが変わってしまったんだと痛感しました。そして剛君と2人で出した答えは、僕たちが最も信頼する2人のアーティストを加えることでした。もはやフラメンコチームとThe WILL のジョイントコンサートという考え方は出来ませんでした。限られた時間の中で、それでも僕が今回の柱と決めていた、より深いフラメンコとのコラボレーションをしなければならない。そして深町さんとの別れに相応しい公演にしなければならない。
タイトルは「狂詩曲 rhapsody」。

19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパのクラシック作曲家達がスペイン狂詩曲を書いたように、魅惑的なスペインが持つ、フラメンコが持つ民族的色彩感を自由で劇的なパフォーマンスで表現したいと思いました。音作りが始まるとギターの片桐さんは丁寧にフラメンコの構成やリズムを解いてくれ、石塚さんは僕のリクエストに献身的に答えてくれました。この2人の協力なしに公演の成功は考えられませんでした。それともうひとつ、何とかもう一度、深町さんと共演しThe WILLを終わらせたいと思いました。

方法はありました。僕が持っているThe WILL のCD「INFINITY ORCHESTRA」のマスター音源から僕のドラムと剛君のバイオリンを抜き、深町さんの音だけにし、それと共演する。曲はプッチーニのアリア「Nessum dorma!」に決めました。もう悩むものは何もありませんでした。 あとは僕の持てるすべてをこの公演に賭けるだけでした。次のページは当日プログラムに掲載したごあいさつ、そして公演「狂詩曲 rhapsody」。写真は僕たちを撮り続けてくれている小澤秀之氏、当日は神戸から駆け付けてくれました。