9月23日11時、昼公演のコンサート会場に着いて少しした頃、こんな時間に珍しくピアノの藤井郷子さんから連絡が入りました。

「是安さんが亡くなったって・・・」

藤井さんのカルテットでたくさんの海外公演を共にしたベースの是安則克さんが亡くなりました。 今年の6月にオーストラリア、カナダ、アメリカをツアーし､11月にはヨーロッパツアーが控えていたのに・・・。 昨年亡くなった深町さん同様、突然の死でした。またしても、僕にとってかけがえのない先輩を失いました。

4年目に入って ma-doのサウンドが成熟し始めていたし、これからもっと一緒に音を出したかった。 それに僕には到底出来ない是安さんの経験談を聞くのが大好きだった。音の善し悪しを聞き分ける耳が絶対で、 僕のことをどう思っているのか、本当は聞いてみたかった。今となってはどうすることも出来ない後悔が押し寄せます。

是安さんのベースはまさに是安さんの声のようでした。深い苦しみに叫び、解き放たれた喜びに歌い、赤子のような 清らかな笑い声を上げ、確信に満ちた教えを囁く。その音ははっきりとした立体となって僕の目の前に現れた。 煩悩の入る余地のない、純真さ・・・。生き方はあまりに不器用で、それだけに崇高な音に嘘が微塵も感じられない。 時に常人の理解を超える音へのこだわりは凄まじく、是安さんが見た是安さんにしか見えない極彩色のファンタジーは 魅力に溢れていた。

今年6月にNYで録音した藤井郷子 ma-do の3枚目のアルバムが是安さんとの最後の作品になってしまいました。

心から、ありがとうございました。

堀越　彰