スイス ローザンヌでの公演を終え、今、ウイーンへ向かう飛行機の中です。
窓からは悠々としたアルプス山脈が見えます。

ローザンヌのホテルから見える景色も素晴らしく、目前にはレマン湖、対岸には水で有名なフランスの街 エヴィアン、その向こうにはアルプス山脈。アルプスから陽が登り沈んでゆくさまは筆舌に尽くしがたい。夜はエヴィアンの街がダイヤモンドのように輝く。

実物の雄大さは伝わりがたいとは思いますが、写真を1枚アップします。
ところで、今回のツアーはローザンヌから始まり、オーストリアのウイーン、フランスのストラスバーグ、フィンランドのタンペレと4カ国を2週間で回るというスケジュール。

サンフランシスコのサクソフォンカルテット ROVAが中心となり、そこにピアノの藤井聡子さんとトランペットの田村夏樹さんが参加。
僕は両氏の紹介で昨年の12月、ROVA来日の際に共演したことがきっかけとなって今回の参加となった。

つまり、サンフランシスコから4人、東京から3人、あとは各国の選りすぐりのミュージシャン4人が参加した11人編成の多国籍オーケストラ「Orkest ROVA」。音はビックバンドアレンジされたフリースタイルのジャズで、藤井さんのつくる何とも独創的な楽曲が魅力的です。

興味のある方は来年1年11日、新宿ピットインで藤井さんのオーケストラのライブがありますのでいらしてください。

さて、間もなくウイーンに到着します。

ウイーンといえば、モーツアルト、ベートーベン、ヨハン・シュトラウスなど偉大なるクラシック音楽家が650年の栄華を誇ったハプスブルグ家のもと数々の名曲を残した「音楽の都」であり、同時に、19世紀末から20世紀にかけて、絵画ではクリムトやエゴン・シ−レ、建築物ではオット−・ワグナーやフンデルトヴッサーなどの世紀末的芸術が花開いたいわば世界最高峰の文化都市であり、今なお街じゅうにその香りを残した都である。

ここでは、今回の滞在中に訪れた場所を紹介しつつ、僕自身のことについても少しお話しできたらと思っています。

少しの間おつき合いください。

「堀越 彰 The WILL」
会場: 南青山 MANDALA
日時: 11月29日(火) 18:30 Open 19:30 Start
料金: \5,000 (1Drink付)税込

■当HPチケットメール受付について■
下記の項目を明記の上、メールにて「チケット申し込み」の件名でお申し込みください。折り返しこちらから「お申し込み内容確認・お振り込み方法詳細」メールをお送りいたしますので、チケット代金を指定の口座へお振り込みください。恐れ入りますが、振込手数料はご負担ください。 ご入金の確認がとれました時点で発送の手配をさせていただきます。 2週間を過ぎても こちらからのメールが届かない場合は必ずお問い合せくださいますようお願いいたします。
 ○お名前(フリガナ)
 ○郵便番号
 ○ご住所
 ○電話番号
 ○e-mail
 ○枚数
 ◇受付メールアドレス  info-horikoshi@mx1.ttcn.ne.jp



「11/29のマンダラでプッチーニをやるぞ!」

いきなりですが、プッチーニのオペラ「トゥ−ランドット」の2曲のアリアをアレンジしようと思っています。まだわかりません。僕が勝手に思っているだけですし、リハーサルもこれからですから。それに、プッチーニはイタリア人でウイーンとは関係ないですし。

でも・・・。でもウイーン1日目の夜は、世界三大歌劇場の1つ国立オペラ座でプッチーニのオペラ第1作目の「妖精ヴィッリ」を観劇しました。もちろんネクタイ締めて。 2002年から小澤征爾さんが音楽監督に就任されているこの歌劇場、ネオルネッサンス様式の大階段や、シャンデリアの輝くロビーなど豪華な内部。パフォーマンスは言うまでもありません。クラシックを聴き始めてまだ5年ほどの僕ですから、こんなところでこんなもの聴いたら影響を受けないわけがありません。どうぞお楽しみに。

クラシック歴5年の僕のお気に入りの作曲家は、ラフマニノフ、バルトーク、ショスタコーヴィッチ、ストラヴィンスキー。何か偏ってますよね。ロシアの作曲家が多いですし。なぜなんでしょうか? 今度深町さんに聞いてみよう。

マーラーも好きだけど長過ぎるし、ショパンはしばらく聴いていると、ピアノが嫌いになる。ピアノ1台で何でもできちゃうところに腹立たしくなってきて、嫉妬心と嫌悪感でいっぱいになる。 そもそも僕は、誰かがメロディーを弾いてくれなきゃ一人では何もできない「ドラム」という楽器に強いコンプレックスを持っていて、その結果「SOLO-ist」にチャレンジしたわけなんですけれども、2003年9月のパフォーマンスでショパンのノクターン第11番を"叩く"シーンをつくったんです。「あの美しく哀しいピアノ曲をドラムソロで表現するんだ!」という、無謀ともいえるトライ。 何でそんなことをやるようになったのか、長くなりそうなので短かめに。

僕がリアルタイムで育った1980年代のヒットチャートは、テクノに代表されるように、打ち込み音楽の創世記。プレイヤーの個性よりも、リズムを簡略化しポップで踊れる音楽に溢れていたような気がします。そんな中で僕の興味は、よりプリミティブなものを求めて、アフリカンミュージックを初めとする民族音楽に向いっていったんです。

リズムそのものに流動性があって、息遣いが聴こえるようなライブ感がある民族音楽。インド音楽、フォルクローレ、フラメンコ、クレズマ−、アフロキューバン、ニューオリンズ、ブラジル音楽、そして、日本民謡を初めとする日本の伝統音楽。その中に僕にとって最も重要な存在がいた。「アストル・ピアソラ」です。

メロディー至上主義とでもいうように、旋律の歌い方によってテンポが変わり、打楽器奏者のいない編成であるにもかかわらず、グルーヴは激しく深い。その圧倒的な構成美に僕は虜になってしまったんです。ピアソラはクラシック作曲家ではありませんが、限りなくそれに近いテイストとスケール感を持っていると思っています。その結果、ピアソラのように伝統音楽的なモチーフを取り込んだ作曲家たちを探すようになったのです。

昨年の「SOLO-ist」はバルトークの弦楽四重奏にチャレンジしました。The WILLではピアソラのバレエ組曲をアレンジしましたし、ラフマニノフの「ボーカリース」は既にレパートリーとも言えます。そして今回、プッチーニ。

「プッチーニは同時期の作曲家から嫉妬されるほど美しいメロディーを書く能力があった」と深町さんが言ってました。もう才能ですよね。その才能に敬意を表し、The WILLという極東の音楽家がプッチーニをアレンジする。夢のある話じゃありませんか。



この国立オペラ劇場で新作を発表し続けてきた先人たちに思いを馳せながら目の前のパフォーマンスに身を任せ、そんなことを考えたウイーン1日目の夜でした。



夏時間から冬時間に1時間繰り下がったことも知らずに朝、7時30分に王宮へ向かい、王宮礼拝堂のミサに出席しました。なぜならそこでウイーン少年合唱団が聴けるから。

礼拝堂の最上階から姿も見えずに聴こえてくる歌声はさながら天使の囁きのようです。あぁ、何という美しいハーモニーだろう。

でも賛美歌はなぜ3拍子なのでしょうか? 深町さんに聞いてみよう。

僕のつくる曲には3拍子がとてもたくさん出てきます。大好きなんです。何も考えずに曲を書くとすべてが3拍子になってしまうほど。4拍子にはない空間というか浮遊感のようなものを感じるし、3拍子の裏に2拍子を感じていれば形を自由に変えることもできる。リズムは立体ですからね。奥行きがあると言ってもいい。

例えば、2拍子を叩いているときには3拍子を感じ、3拍子を叩いているときには2拍子を感じる。だからその変化がスムーズであり、さらにそれぞれのバリエーションが発展していけると思っています。アフリカンパーカッションに代表されるように、民族音楽のリズムはこのような複合リズムでできています。2と3はリズムにとっての最小単位であり、まるで男と女のようにそれですべてとも言えます。

今回のツアーでやる藤井さんの曲の中に「An Alligater in Your Wallet」という曲があります。
6 7 6 7 とアドリブが続き、3.5 4 3.5 4 と変わり、10 10 10 10 10 でクライマックス、最後には4 5 2 5 5 3 4 4 。

興味のある方は、1/11 新宿ピットインへ。

王宮礼拝堂に続いて、「知の小宇宙」と呼ばれる大理石造りの巨大な空間、国立図書館へ行きました。

壁にびっしり、これ全部本です。

さらに、かつてのハプスブルクの宮廷美術館で、レンブラントやルーベンスの作品をコレクションしている美術史博物館。


夜は、毎年お正月に世界中継されるニュー・イヤー・コンサートで有名なクラシックホール楽友協会でベートーベンの第九を聴きました。

1870年に建てられたこの金箔張りの大ホール「黄金の間」は、うわさどおりの眩しさ。隙間なく装飾デザインする西洋人の感性って一体何なんでしょうか?

とにかく歴史というのはすごいものです。

日本だって神社仏閣には当然歴史を感じるし、奈良、京都には街全体に歴史的建造物や仏像がありますよね。それに、歌舞伎座や国立能楽堂には、日本で生まれ育った芸術家たちの魂が宿っているとも思っています。

しかし、ここはウィーン。事クラシックやオペラに関しては特別なものを感じますよね。何より、終演後、コンサートホールを後にして街の中を歩いていても、モーツアルトやベートーベンが流れているような・・・。

そう、気分を壊すものが何一つないんですよね。コンビニもない、ファミレスものない。絶対ドンキホーテなんかない。 敷き詰められた石畳、薄暗い街灯、ゴシック様式の教会、石の街に響き渡る鐘の音、オシャレなカフェ、そこに集う粋な大人たち。

あぁぁぁぁぁ・・・。 そろそろ腹立たしくなってはきませんか? 申しわけありません!

でも、まだまだ続く、ウイーン日記2日目でした。


Copyright(c) 2005 Akira Horikoshi. All Rights Reserved.
お問い合わせは info-horikoshi@mx1.ttcn.ne.jp まで。