当日、「特集3をアップします!」と宣言をしておきながら、あっという間に3週間がたってしまいました。 お待ちいただいていた方、申しわけありません。

6/29は、あふれるほどのたくさんのお客様にいらしていただきありがとうございました。そんな中で「堀越彰The WILL」の初ライブを無事終えることができたことをうれしく思っています。 お陰様で次のライブが11月29日(火)に決まりました。再び南青山マンダラでお会いできることとなりました。またご案内させていただきます。

今回の公演を終え、僕は、
渡辺剛、深町純、堀越彰がつくり奏でる音が極めて特殊であることを確信しました。そして音楽のあらゆるジャンルを越え、楽器の限界さえ越えていくこのグループがいかに可能性に満ちているか、痛感する瞬間でもありました。

  僕たちはまだまだ進化します。
  お楽しみに。堀越 彰

音楽の、芸術の表現というのはつまるところどこへ漂着するのだろう。
人々の注意は私たちのどこへ注がれていたのだろうか。
僕たちは治外法権である。

    「The WILL」の最初のライブを終えて。渡辺 剛

正直に言って、まだ「The WILL」についてまだ言うべき事は多くはない。なぜなら、このバンドはまだほんの生まれたばかりの新生児のように、その可能性の大きさに比べて、為したことはあまりに小さいからだ。現在の日本の貧しい音楽状況にあって、こういうバンド、つまりインストゥルメント(器楽演奏、あるいは歌がない)という構成と、平易な意味での娯楽性を排除した姿勢は、受け入れられる場の極めて少ない。つまり商業的に成功するということはもちろん、多くのスタッフに支えられてのライブの継続すらままならないものだ。

 僕はずいぶん前から、「音楽が商品になった時から、(音楽から)何かが失われた」と主張してきた。音楽が商品となった最大のキッカケはレコードというメディアの登場である。つまり1900年の初め頃であるから、ちょうど100年前のことだといえる。あるいは、ラジオ放送というものが始まったのも、ちょうど同じ頃ヨーロッパで1903年に、テレフンケン社が創立され鉱石ラジオの普及が始まったそうだ。エジソンが初めて録音機を作った時、最初に録音したものが、彼自身の歌う「メリーさんの羊」であったことはよく知られた話であるが、詩や小説の朗読でもなく、また著名人の演説や自然の音でもない、「歌」であったことは、レコードというもののその後を象徴した話である。

 もちろん「音楽」そのものの歴史はかなり古い。今手元に資料がないので正確なことは言えないが、おそらくあのピラミッドを作り上げたほどの、高度な文明を持ったエジプトに音楽がなかったとは思えない。それならば紀元前二千年、つまり4千年も前の話だ。あるいは中国の歴史が六千年というなら、音楽の歴史もまた同じようなものだろう。人間の文化の歴史を見ると、文明というものに音楽は必ず内在されていたからだ。また、こういう民族音楽とは別に、バッハが音楽の父と言われるような音楽でさえ、彼の生まれたのが1685年であるから、3百年以上も昔のことである。

 音楽が商品となった、ということの意味は、「聴衆」という人々の存在を生むことであり、音楽を聴くことが、一般の家庭や人々の日常生活に、必要不可欠なものになったということである。もちろん逆に言えば貴重な、大切なものではなくなってきた、ということでもある。それまでの音楽家の誰ひとりもがしなかった、目前にいない仮想の聴衆に向かって音楽を演奏するようになり、かつてのどんな高名な音楽家も手に入れられなかったような、高額の収入を得るようになったということである。これで音楽自体に変化のない方が不自然というものだ。

 さて、「The WILL」は、その意味では古いタイプの音楽に回帰しようとしているかに思える。つまり、何よりも大切にしているのは、その音楽的な主張であるからだ。「主張を持っている」ということは、かつての芸術というもののごく一般的な特徴であった。だから古いのである。僕はそれがまず気に入っている。その精神が居心地よいのである。同時に「The WILL」は骨董品であろうとはしていない。むしろ現代社会に受け入れられたいという、無謀とも思える望みを持って、そのためのささやかな努力を惜しんではいない。

 だから、今生まれたばかりの新生児が何をしたかを問うのは、まだ時期尚早とも言える。「The WILL」がこの混濁した、腐れ切った逆境の中でどれほど生き続けられるか、つまり音楽活動を続けられるかが、まず僕たちが受けなければならない試練だと思う。

 ぜひとも今後の「The WILL」の活動を、暖かい眼差しで見守ってくださることを、期待するばかりである。深町 純



1st 1 Escualo          (Astor Piazzolla)
ご存知ピアソラの名曲です。オリジナルにはもちろんドラムは入ってませんが、
The WILLバージョンはグルーヴィーなロックフィールでライブの幕開けです。
 
2 Perucucion Interna    (Akira Horikoshi)
1998年、アルゼンチンから来日したタンゴカンパニー「ブエノスアイレス・ネオタンゴ」のリーダーであり演出家のエフラインが僕とダンサーの一騎討ちをする曲につけてくれた曲名が「ペルクシオン・インテルナ」。スペイン語で「心の内面をたたき出す」という意味で、その言葉をイメージしてこの曲を作りました。残念ながら1年後にエフラインは癌で他界しましたが、僕にこの曲を残してくれたと思っています。

3 Pathos           (Tuyoshi Watanabe)
剛君作曲の美しく優しい5拍子の曲。メロディが印象的で、1度演奏するとしばらく頭から離れない魅惑的な曲です。


4 Piano Solo Prelude 4番  (Chopin)
深町さんの十八番でもある、ショパン曲。何とも美しいショパンのプレリュードの前に、その3倍くらいのイントロがつきました。もちろん即興で。ここでクルクルと羽根を動かす田中真聡のオブジェ「トリコプタ−」が登場。

  5 TANGO BALLET       (Astor Piazzolla)
今回のスペシャルプレゼンツ、4年振りの再演となったピアソラのバレエ組曲です。
超絶技巧連続のバイオリンパートを涼しい顔で弾き続ける「剛 全開!」の20分間でした。
  _ イントロダクション
  _ 街  
  _ 出会い 忘却
  _ キャバレー
  _ 孤独
  _ 終曲 町
  _ 天使の死
2nd 1 Anomalocaris         (Jun Fukamachi)
深町さん書き下ろしの新曲。4つのシーンからなる音絵巻。
作曲家、アレンジャー深町純の真骨頂といったところでしょうか。 曲名の意味・・・、何でしたっけ?
  2 Drum Solo Truth     (Akira Horikoshi)
4種類のSEを使う、僕の新曲です。「僕の背後に歴史の明暗を見続けてきたかのような力の均衡を保とうとするオブジェが煙の中に浮かび上がる。」なんて照明プランを出したら、マンダラの照明担当 小宮さんが張り切ってくれました。僕もドラムを叩きながら「一体何が起こってるんだ!」と思うほどの照明が上から下から背後から、「僕が見えないんじゃない?」と心配になるほどの大量の煙に「ちょっと撮影は困るなぁ」って感じのストロボ連発で幻想的な世界を作つくっていただきました。小宮さん、ありがとうございました。次回も指名させていただきます。音と同時に姿も消えてた・・・なんて演出をしたら、イリュージョンですよね。
 

3 Violin Solo  Pedal         (Tuyoshi Watanabe)
真っ赤な照明とリクエストしたら、剛君が真っ赤に染まってしまいました。何てったって「鮮烈のバイオリニスト」ですから。
エレクトリックバイオリンにエレクトリック足鍵盤でギンギンでしたね。
羽根のオブジェが似合う男です。

  4 Purple Haze     (Jimi Hendrix)
ギンギンついでにジミヘンです。ロックは不滅ですね。ちなみに僕は「The WILL」はロックバンドだと思っています。
確かにクラシックもやりますが、音はアコースティックでも3人の精神はロックです。
 
  5 VOCALISE           (Rachmaninoff)
マンダラでも言いましたが、世界で最も美しいと信じて疑わないラフマニノフのボーカリーズ、
渡辺剛 & 深町純バージョンです。
 

6 Sing Sing Sing        (Louis Prima)
これ以上速くできないほどスピィ−ディーな演奏でした。テーマは最後にしか出てこないし、「Sing Sing Sing」だってわからなかった方もいるのではないでしょうか。

 

7 WAR CRY -鬨の声-       (Akira Horikoshi)
昨年の「SOLO-ist」公演のタイトル曲。





EN 弔いの鐘            (Akira Horikoshi)
何を弔っているのか?という質問がよくありますが、それには答えません。というか答えがないのです。あえて言うとすれば、弔われるべきものすべてです。それはきのうまでの自分かもしれないし、きょうの演奏かもしれない。過ぎ去ってゆくものすべてが今の自分を形成しているわけで・・・。ただこれは答えではありません。たった今、思いついた1つの例えにすぎません。ドラムセットの前に座るとき、特定のメッセージは持たないようにしています。宗教家でも思想家でもない僕が何か語り始めたらおかしいでしょう。


最後までおつき合いいただき、ありがとうございました。



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