風の気持ちよい季節ですね。いかがお過ごしですか? いよいよ公演まで3週間となりました。 この公演に関わるスタッフやアーティストたちが、ひとつのチームとして作品をつくり上げていく様子を見ていると、うれしい驚きばかりです。この成果をぜひシアタートラムで確認してください。シアタートラムを荘厳なる赤と黒の教会に染め上げます。会場でお会いできればうれしいです。どうぞお楽しみに。 堀越 彰 |
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SOLO-ist -Truth- < 命の証 > ハバネラが聞こえる - 愛 - それはこの時代 どんな意味を持つのだろう < 歪んだ時代 > <新たなる狂気> <真実> |
伊集院史朗 Shirou Ijyuin (フラメンコ舞踏手/カホン) 1974年ベルギー生まれ。慶応義塾大学在学中にフラメンコに出会う。渡邊薫、森田志保、小島慶子に師事。1998年渡西。約2年の滞在中、主にエル・トロンボ、ファルキートに師事。以後、渡西をくり返し、ファン・デ・ロス・レジェスらに踊りを、マヌエル・ソレールにカホンを学ぶ。 2001年4月、アントニオ・カナーレス芸術監督の鈴木敬子リサイタル「MUNDO DEL FLAMENCO」に出演、好評を得る。同年、日本フラメンコ協会主催新人公演にて奨励賞受賞。2002年2月 歌い手の石塚隆充、ギターの沖仁、踊り手の吉田光一と共に「クアトロカミーノ」を結成。現在に至るまで、7度の全国ツアーを展開。2003年、歌い手の大渕博光、ギターの西井顕司、パーカッションの田中裕介、踊り手の須永実季と共に「Raiz de Yerba」を結成、ライブ活動を展開。2000年より2004年まで、西日暮里「アルハムブラ」に出演。2005年より、東京や福岡などで教授活動を開始。同年8月、「愛・地球博」にアドリアン・ガリアの舞踊団として、スペインパビリオンの「アンダルシア・ウィーク」に出演。現在、全国のタブラオなどに出演するかたわら、クーロ・フェルナンデス、イスマエル・フェルナンデス、エンリケ・エル・エストレメーニョ、ファン・デ・ロスレジェス、アナ・マリア・ロペスら著名なアーティストと共演。 |
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堀越 |
今回のスペシャルゲストを紹介します。 ところで、伊集院さんはベルギーで生まれでしたよね。お父様のお仕事の関係ですか? |
伊集院 |
はい。父が国際弁護士なので、その関係でたまたま現地で生まれ、1歳くらいまで向こうにいました。 |
堀越 |
では、フラメンコとの出会いは日本になるわけですね。 |
伊集院 |
僕がフラメンコに出会ったのは19歳のときです。それ以前は、フラメンコはおろか、踊り全般に触れる機会もなく成長してきたんです。体を動かすことは小さいころから大好きだったので、中学ではバスケットボール、高校では柔道と少林寺拳法に挑戦してみました。しかし、スポーツや格闘技には、結局心からはのめり込めず、何となく違和感を持っていました。たまたま自分には合わなかったんだと思います。高校卒業後、一年間の浪人生活を経て、大学に入学しました。そして、入学した日に掲示板にあったフラメンコサークルのポスターを見て、「これだ!」と感じたんです。 |
堀越 |
何でしょう、ピンと来たっていうやつですか? |
伊集院 |
なぜそう思ったか、実は自分でもよく分からないんです。そのころの僕は、浪人中の勉強中心の日々から開放されて、体を動かしたいという衝動がかなり強くなっていました。もともと体は動かしたくても自分に合ったものを見つけられないできたので、幼少のころから抱えていたストレスはかなり大きかったと思います。それをフラメンコだったら受けとめてくれると、無意識のうちに感じたのかもしれません。フラメンコを一度も観たことがなく、どんなものかも知らないのに、僕は習い始めて、半年後には、僕にはこれしかないなと感じるようになりました。 |
堀越 |
たった半年で伊集院さんを虜にしたフラメンコの魅力とは何ですか? |
伊集院 |
自分にはこれしかない、と感じさせてくれたフラメンコの魅力。一言でいえば「一体感」だと思います。まずは、音楽と踊りの一体感。フラメンコは、まず歌が始めに生まれて、それにギターの伴奏がつき、最後に踊りができたと言われます。 |
堀越 |
パーカッションはそのずっと後ですよね。 |
伊集院 |
パーカッションはもっとずっと後で、パコデ・ルシアがペルーに演奏旅行をしているときに見つけたのが、カホーンという、ただ箱を叩くだけのパーカッションです。彼はそれを持ち帰り、フラメンコに使い始めたんです。 |
堀越 |
わずか20年足らずという感じですよね。信じられない。 今やフラメンコのためのパーカッションだと思われていますよね。 |
伊集院 |
そうかも知れませんね。そもそもフラメンコは歌とギターで作られた"音楽ありき"のものなのです。だから、フラメンコの踊りは音楽を視覚化したもの、と言ってもいいかもしれません。 |
堀越 |
すばらしい! 「音楽の視覚化」、僕がやりたいのはまさにそれです。同様に「感情の音楽化」、あらゆる感覚がクロスしている状態が僕のやりたいことです。 また、音と動きの関係で言えば、身体が最大限にリラックスできたとき、どう動かすかが条件になって“動きありき”で音を出している瞬間がたくさんあるんですね。“こういうフレーズが叩きたい!”と思って叩くのとは違って“動きありき”で音を出せたときの即興的な新鮮さや必然性を感じることができるんです。 |
伊集院 |
音楽と踊りどちらかだけが目立つのではなく、お互いを支え合い、高め合う中で生まれる一体感がフラメンコにはあります。そして、東洋と西洋の一体感ですね。 |
堀越 |
クロスカルチャーですね。 |
伊集院 |
フラメンコは、遠くインドから流浪してきたジプシーがスペイン南端のアンダルシアにたどり着き、そこの文化を吸収して生まれたものです。そのためフラメンコには、僕たち日本人にも何か懐かしさを感じさせるような、東洋的な響きがあると感じます。 |
堀越 |
ありますね。フラメンコの歌を聴いていると、日本民謡の原点のような気がします。より感情的で、原始的な・・・。僕はフラメンコのそんなところにひかれます。西洋とも東洋とも言えるような…。それがジプシーというものなのかもしれないけど。 |
伊集院 |
スペインに定住したジブシーは、その土地にもともとあった文化、音楽や言葉や宗教などを吸収しながらも、決して自分達以外の民族とは交わろうとしなかった。そのためにずっと迫害され続けてきたし、今でもジプシーに対する差別意識は強く残っていると思います。そうしたつらい歴史の中で生まれてきたフラメンコには、まさに彼らの魂の叫びが宿っているんでしょうね。 |
堀越 |
僕は常々、自分の感覚はダンサーに近いと感じでいます。頭と体の、あるいは感性と体のバランスをいつも感じています。ダンサーが幾ら動きに気持ちを込めても、技術と身体バランスがとれていないと、ただ力んでいるだけになる。そこに相手のダンサーや音との駆け引きもある。でも、もう一方で一瞬のためらいも許されない。音をよりスケールフルに見せるには、多少のリスクがあってもタイムの中に動きを突っ込んでいく、なんてこともするわけでしょ。つくづく同業者だと思うんですよ。 |
伊集院 |
堀越さんがフラメンコを踊られたら、きっといい感じになると思いますよ(笑)。 |
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堀越 |
伊集院さんの現在の活動と、今こだわっていることって何ですか? |
伊集院 |
自分がいつもこだわっていることは、常に全身全霊で表現すること、そしてそのために必要な基礎的な技術を常に磨いていることです。 |
堀越 |
そのために今もスペインに行くのですね。どのくらいのペースで行っているのですか? |
伊集院 |
現在は、1年に1回、1、2カ月というところです。 |
堀越 |
コンスタントに行っているのはすばらしいですね。僕もニューヨークに1カ月行きましたけど、なかなか続いては行けませんからね。 やはり技術習得が目的なのですか? |
伊集院 |
フラメンコの技術的な研鑽は、情報の多い日本でもかなりの部分でできます。スペインに行くのは、新しい振りを学ぶためというよりも、スペイン人にあって僕にないものは何か、彼らがどう感じ、何を重要に考えてフラメンコをやっているかを感じるためです。つまりは、実際に練習するよりも観察することが主となります。それは、フラメンコだけでなく、生活スタイルにまで及ぶものです。いずれは、ライブや公演をやりにも行きたいですね。どう観てくれるか、楽しみです。 |
堀越 |
それはぜひ実現してください。そういう一人で乗り込む的なこと、大好きです。 |
伊集院 |
現在は、さまざまなライブに参加して日々たくさんのことを学ばせていただいています。純粋なフラメンコのライブでも、日本人のアーティストだけでライブをするときと、スペイン人アーティストに混じってライブするときは、ぜんぜん雰囲気が違います。僕はどちらも大好きですし、それぞれのよさを自分に取り入れていければと思います。 |
堀越 |
スペイン人とジプシーの間には解け合わない違いがあるようですね。ひょっとしたら日本人はそのつなぎ役になれるのではないでしょうか? |
伊集院 |
先ほどもお話ししたように、現在でもジプシーに対する差別は存在しているし、反対にジプシーも非ジプシーを見下している。それは、世界各地で見られる根拠のないあらゆる差別と同じように、人間の無意識のレベルまで達してしまった、深刻な問題なのかもしれません。確かに、両者の間に第三者が入ることにより、フラメンコの場合はジプシーと非ジプシーの間に日本人が入ることにより、より広い視野へと解き放たれる可能性はあると思います。将来的にそうなっていけたらいいですね。 |
堀越 |
そう思います。 |
伊集院 |
今回の「SOLO-ist」のように、ジャンルを超えた舞台に参加させていただけることは、本当に大きな喜びです。普段フラメンコの枠内でしか見られない自分自身を、堀越さんを初めとするすばらしいアーティストの方々の世界に飛び込ませることによって、今までとは次元の違う一体感を得ることができる予感がしますし、自分自身のアイデンティティーを再構築することにもなると思います。 |
堀越 |
ありがとうございます。僕も自分の楽曲や演出でフラメンコダンスと共演するのは今回初めてなんです。純粋なフラメンコとは大分違ったものになるかと思いますが、僕にとっても伊集院さんにとっても、今までに経験のないチャレンジにしたいと思っています。 今、僕が20歳ぐらいのときに上野の文化会館で観たアントニオ・ガデスの舞台を思い出します。それにスペインに対する興味はここ数年、どこよりも強いんですよ。ガウディが生まれた国ですからね。伊集院さんの向こう側に、そんなスペイン文化や芸術への敬意も持ちつつ大事に舞台をつくっていきたいと思っています。 |
伊集院 |
アントニオ・ガデスは、フラメンコを世界に通用する舞台芸術にまで高め上げた天才です。彼がすごいのは、土着的なフラメンコのよさを失わせずにいたことだと思います。また、ガウディは、無機的になりがちな建築を有機的な、生き物のようなデザインへ可能性を広げていった人なのではないでしょうか。スペインの文化・芸術には、スペインワインのような土着的な味、人間くさい部分が強く生きていると感じます。それは個人個人の自分らしさということにもつながってくるのではないでしょうか。僕も、堀越さんとの新たな経験に、自分らしく楽しんで参加していきたいと思います。 |
堀越 |
よろしくお願いします。ありがとうございました。 |
2006年 6月23日(金) 19時開場 19時30分開演 24日(土) 14時開場 14時30分開演/18時開場 18時30分開演 シアタートラム 東急田園都市線三軒茶屋駅5分・世田谷線三軒茶屋駅となり 世田谷区太子堂4-1-1 03-5432-1526 料金:前売 \ 5,000 当日 \ 5,500 世田谷区民割引 \4,500(くりっくチケットセンターで前売のみ取り扱い) チケット取扱:
お問い合せ:キョードー東京 03-3498-9999 ◆託児サービスあり(定員あり 要予約) 有料 お申し込み03-5432-1530(劇場) 車椅子スペース ご利用希望の方は、ご観劇前日までにくりっくチケットセンターまでお申し込みください |
「The WILL」1st CD |
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